残りものから勝手に選ぶ、2018年コンテンツ・ベスト5
おはようございます。こんにちは。
何より2019年もよろしくお願いします。
そんなときに今さら感はありますが、2018年のベストコンテンツ5を発表します。しかし、ここには勝手な「縛り」を設けています。すでに2018年12月21日に、ゲンロンの友の会総会において、さやわかさんが恒例の「ベスト100」を発表しています。そこに現れなかったものから選ぼう、という試みです。
けっこう無謀です。残りもの感は否めません。いやしかし、こういう事態は、いろんな意味で周回遅れになった者の宿命です。それではどうぞ。
1)青春五月党の復活
ついに。柳美里が2018年10月、福島・小高という地で青春五月党を復活させた。
舞台は「書店兼芝居小屋を作る」という構想が結実した「ラママ小高」。そして俳優は県立ふたば未来学園高校の演劇部の部員、顧問。彼ら/彼女らの世界として 2018年の『静物画』が 立ち現れたのである。
およそ20年越し?に観ることができたのは、もしかしたら震災があったからなのかもしれないと思うと、たしかに居心地が悪い。しかし、当時小学校の中学年だった彼ら/彼女らは、震災の記憶を生々しく感じている最後の世代になっている。 そして、声に出すには、ある程度時間が必要だったはずだ。このタイミングだからこそ上演できた『静物画』だ。
そして何より、下北沢や渋谷ではなく、小高という場所で発信していることの重要性。地方都市からも遠くはなれた町で、その地に生きる人々が声をあげること。時には、他から来た人とも交わること。選択肢が都会だけじゃない、ということが当たり前になったら素敵だと思うのは、観光客のうわごとだろうか。
そして小高に行く途中、飯舘村を通った。つくづく感じる。震災後という「戦後」はまだ終わっていない。
2)タッキー引退
解散しても、事務所が移っても、表舞台に立っていてくれればファンは観ることができる時代になった。それを表象したのが、SMAPというグループの変遷だ。新しいようでいて、これは意味的には「2010年代のモード」だ。しかし、タッキーの決断は(もちろん、不可抗力的なことが直接的な原因だったとしても)もっと新しい。「そう遠くない未来のモード」を予感させる。世の中の雰囲気は、景気と同じように、常に揺り戻しと共にある。
それをふまえ、つまり「見える化」を徹底的に行っている現在の次に起こることを予想すると、「見えないところこそ重要」というモードが来ることは、想像に難くない。「ポストトゥルースが行きつく先はSNS離れかもしれない」とか「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が盤石ではないかも」というささやきも聞こえる昨今、タッキーの引退について一連のセレモニーを「ただファンと事務所の内輪ウケ」などと言っている場合ではない。
3)チームラボ
2018年の作品には、「普通のひと」をあぶり出すえげつなさ、という一点において「芸術的」な意味がある。
具体的にはたとえば・・・・・・
・体のサイズ、筋力は標準以上
・アトラクションは誰かと一緒に楽しむ
・写真はたくさん撮るものだ
・「アート」は人をハッピーにする
ということに何事もなく抵抗感のない「普通のひと」かどうか? 要するに「リア充判定装置」なのだ。多様性なんてロンドンが燃えてるぜ!ぐらいの勢い。
4)「沖縄」
私たちは「沖縄」に依存しすぎている。しかし同時に、そのことを忘れているかのように振る舞う。
羽田空港の飛行コースが変わるからと言って、あの騒ぎようは一体何なのか。「沖縄」の人は笑うだろう。今さら何言ってるのかと。
基地の問題だけではない。いや、それに関係があるとも言えるが、平成の間に流行った歌の「沖縄」に関係する比率は相当なものだ。「沖縄」出身の芸能人には、とりわけ地域性が求められている。「沖縄」を消費するだけ消費した後に残るものは何だろう。「沖縄」が基地に依存しているのではない。日本全体が「沖縄」に依存しているのだ。
5)「発達障害」誤解キャンペーン
TVで取り上げないと、知られる機会が少ない。しかし、TVのインパクトが実態とかけ離れてしまうことがある。 啓蒙するのであれば、心の病気は脳という器官の不調だという観念と同じようなことが必要だ。心の病気については、もうそろそろ広まってきただろうか。発達障害も同じことだ。脳が変則的に動く。
障害者雇用を積極的にしている企業って限られているし、特性を活かした仕事が世の中に簡単あるのなら、そもそも苦労していない。若い人に夢を与えるだけでは、うまくいっているケースのPRでしかない。
その一方で「発達障害って個性って考えればいいんじゃないですかね」という無邪気なコメントに同調しても、訂正する人がいない。いや、それは確かに理想だ。だったらその人は、歩けない人にも「個性ですよね」と言うべきなのだ。
以上。何も統一感がないですよね。しかしながらここには、2018年の困難さが滲み出ているのではと。