さる2010年10月16日土曜日のこと。出版@カフェ主催の講座「iPadでまるわかり電子書籍」に行ってきました。引用じゃないからおかしいけど、quoteで囲った部分は要約です(後のこともあるので、なにか良い手を考えますが…)。しかし、電子書籍ってやたらと字画が多い。メモをとりながら「電子書籍」という言葉は何か別の日本語がないだろうかと探していた。パパッと書いたのは「e本」。待って、ちがうんだ、ダジャレじゃないんだから…!!
というわけで私的まとめ。けっこう長いです。
第一部
「新しい本の『かたち』がはじまる、BOOK BUSINESS 2.0」
-電子書籍で著者と出版社の関係性が変わる!-
講師:メディアジャーナリスト・津田大介(@tsuda)
●電子書籍のメリット
電子書籍が低価格になることはメリットだ。その一方、印税還元率の透明性が高まる(はず)。しかも必ずしもボリュームがあるものでなくてもいいのでさらに著者を呼び込めるという利点もある。そのほか、在庫を抱えないから流通しやすい、バージョンアップが楽。フォーマットが限定されず、ネットへの接続も容易なので様々なメディアとの連携もたやすい。
周りでは単価が低くなることを嘆く声もあるけれど、やはり多くの読者が集まることのほうが大切だと思う。本を買ってまで読もうという人は、本の近くで仕事をする人が考えるよりずっと少ない。
●Twitterと電子書籍が切り拓く可能性
電子書籍はTwitterとの親和性が高い。プロモーションにも使えるし、出版社の公式アカウントは情報発信のハブになることもできる。Twitter自体を利用することでマネタイズも可能になるのでは。ソーシャルメディア連携することで、新しい本の形が生まれるかも。
そういえば津田さんはTwitterで自著について語ることを「レコ発ライヴみたいなものができてうれしかった」と言う。なるほどなーと思いつつ、それは多くの著者が感じていることだろう。高橋源一郎(@takagengen)さんの「路上演奏」なんてまさにそれかな。
●著者と出版社の関係が変わる
契約について、交渉や選択の余地が生まれた。著者、編集、企画、営業のそれぞれが、仕事の重みに応じてフェアな報酬を得ることが可能に。
さて、それでは印刷は何をするのか? 「入稿データがあるから云々」という話を聞くけど、それは短期的な話で、普通の本からは離れることを考えたほうがいいと思う。そうでなければ、出版社や著者と、企画の段階からきちんと参加すること。豪華本の類なら、需要と供給に見合った規模の市場になるのでは。技術であれば、すごく読みやすい電子デバイス部品を作るとか。
●著者と読者の関係が変わる
電子書籍とリアル、クラウドが結びついたサービスの可能性。ネットで本を共有し、読者とのコミュニケーションを図り、また知らない人への喚起もできるはず。自動化されたレコメンド機能と補完関係ができるはず。本を起点とした新たなマネタイズを模索することもできる。チケッティングサービス、コンサルティングや質問受付など。企画力のある、本格的なオンデマンド出版ができるかもしれない。今までも「本は名刺代わりに」と言われてきたが、本当の意味で名刺代わりに使う人も増えるのではないか。改めて盛んになってきた有料メルマガへの誘導としても電子書籍は使えるはずだ。
このほか、自身のapp版『Twitter社会論』をリリースした経緯と考察も。洋泉社新書の内容をアップグレードして発表したapp版。「ボーナストラック付スペシャルエディション」といった感じの位置づけだったという。そういえば「出演者による場面解説」も、映像の世界ではずいぶん前に始まっていることですね。本に限れば、「文庫版のためのあとがき」にも似ているのかもしれませんが。既視感でいえばティーンズハートの「OMAKE」ページでしょうか…。

そして引き続き…
第二部
「iPad電子書籍の現状と学ぶべき5つのポイント」
—どのように制作して、どう販売していくか?—
講師:インストラクショナルデザイナー・境 祐司(@commonstyle)
●電子書籍のフォーマット
DRMについて、現時点ではどちらも良し悪しがある。どちらも一筋縄ではいかないように作られている。そこで出てきたのが「ソーシャルDRM」。利用する人が不便なほどガチガチに厳密なコピー規制をするのではなくて、誰が買ったのかが分かるように緩くDRMをかけること。日本よりも電子書籍市場が先行している海外では、これが主流になりつつあるのだとか。いずれにしても、フォントやプラットフォームの形に整え、ある程度囲うのがe-book。すべてがオープンならWEBと変わらない。
WEBがものすごい勢いで一般に普及したのは、HTMLが登場したから。その後のバージョンアップも、以前のバージョンを取り込みながら発展している。それを考えると、電子書籍もHTMLのようなものが作られればWEBのように普及するのではないか、とのこと。こうした倫理観に適うのはEPUBで、だからこそEPUBが業界標準(あくまでも世界標準ではない)になりつつあるのでは。
これでタテ書きの表示ができるようになったら、ますますカオスになるんだろうな…というのは察するにあまりある。
●実制作について
InDesignCS5からEPUBを作る、実際の模様は11月中旬にUst中継する予定。
これまでにも公開されていたらしく、制作過程を見るいい機会かも。DTPに携わるデザイナーさんのなかには「コードを埋め込む」というだけで不得意分野にしている人もいて、それはとてももったいないと思う。
●電子書籍だからできること
そのうち、読書専用端末(KindleやSony Readerなど)と汎用端末(iPad、携帯電話、PC、ポータブルゲーム機など)で、読むものが変わってくるのでは。読書専用端末はテキストに寄っていって、紙に近づいていく。汎用端末は映像や音声など、拡張した本の形になるのでは。
iPadを実験台に色々と見せてもらえたのですが、10月26日発売予定『電子書籍制作ガイド~プロフェッショナルのための最新ノウハウのすべて~』とか11月12日発売予定の『プロならば知っておくべきWebコーディング&デザインの定石100』を共著で発表されるそうなので、そちらで具体的なところは勉強しようかなーと思います。
そういえば、装丁を手がける人は電子書籍時代にどういう仕事をするんだろう?
単にkindleやiPad上で作品をリリースすることだけでは「これからの本」とは呼べない気がする。本が紙に閉じられたフォーマットから解放されるという点で、本が新しいカタチを帯び始めること自体に意味があるように思う。
さらに。
第三部
「スグにはじめられる電子書籍のつくり方と体験トークショー」
講師:e-Fusion 黒岩潤司
「あの」と言っていいのか…eWiFiを制作した会社の方でした。今すぐにappストアで電子書籍をリリースしたい人に向けたお話。「PDFとJPEGがあればひとまずappができる」というのは、確かに現段階ではひとつの手ではあるんですよね。appの方が海外での閲覧、参照がされやすいメリットを活かすような場合は、特に。
iPhone/iPad用電子書籍アプリ制作サービスを開始しました。|イー・フュージョン
こういうことみたいです。
まとめるとか言いつつ、やっぱり長くなりましたが、当日もけっこう長丁場でした。こういう集中力を必要とする機会って、なかなか珍しい。これまで、セミナーと名のつくものを斜に構えて見てた部分もあったけど充実した時間が過ごせました。